部長とあたしの10日間
「泣かれるのは苦手なんだ…」


ポンポンと頭を撫でる、その手の温もりに戸惑う。
どうして部長は、何だかんだ言っていつも優しいんだろう。


気付けば、さっきまでの葛城主任に対する苛立ちなんてどうでもいいくらい、あたしの頭の中は部長でいっぱいになっていた。
我ながらなんて単純なんだろう。


こっそりハンカチの陰から部長の顔を盗み見る。
その柔らかい眼差しに、不覚にも胸がドキンと音を立てた。


認めたくないけれど、あたしは今、部長にときめいてる。


確かにいい男なのは認めるけど、好きなタイプでも何でもないし。
何より昨日和田さんに失恋したばかりだっていうのに。


だけど部長から目が離せないのは確かで、あたしはそんな自分自身に一番動揺していた。
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