部長とあたしの10日間
そんなとき、エレベーターホールの方から足音が聞こえてきた。
誰かがこっちに来る。


どうしよう。
こんな泣き顔見られたくない、と思った瞬間、


「こっち来て」


部長はあたしの腕を掴んで、エレベーターホールから死角になるスペースへ引っ張って行き、そのままそっと壁に押し付けた。


ひんやりとした無機質な壁と部長の温もりの狭間で、突然自由を奪われて焦る。


えっ?


思わず声を上げそうになったところで、部長は慌ててあたしの口を手で塞ぐと、そっと耳元で囁いた。


「黙って。
こんなところを見られて、部下をを泣かせてたなんて噂が広まったらたまらない」
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