部長とあたしの10日間
手に入らないと余計に欲しくなるのが性。
初めは興味本位だったはずなのに、あたしはいつしか彼を振り向かせるのに躍起になっていた。


何かと理由をつけて企画部に出入りしたり。
彼の好きなマイナーバンドのファンだと嘘をついては気を引いた。


和田さんにしたって、ライブのみならず食事やデートに誘えば大抵OKしてくれたから、あたしを憎からず思っているに違いないし。
そんなフットワークの軽い彼に、誰か他に特定の相手がいるとも考えづらい。


だけど彼は、いつまでたっても同僚というスタンスを崩してくれなかった。


痺れを切らしたあたしは、一昨日ついに最終手段、すなわち色仕掛けに出た。


「まだ帰りたくないな…」


ライブ後の居酒屋で、酔った振りをして自慢のEカップが彼の腕に当たるようにしてそう言うと。


「…いいよ、どこか行こうか」


和田さんは今までのストイックさが嘘のように簡単に誘いに乗ってきた。
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