部長とあたしの10日間
さっきまでふわふわと全身に回っていた酔いが一気に覚めていく。


ベージュのスーツと、同系色のハイヒール。
職場で会った時と同じ装いなのに印象が違うのは、いつもしっかりとまとめられている髪をほどいているからだろうか。


夜風になびく髪は、いつも以上に葛城主任をきれいに見せた。


人混みの中にただ立っているだけで目を引く。
悔しいけど、彼女みたいな女をイイ女と呼ぶのだと認めざるを得ない。


『お前は新人の頃のあいつによく似てる』


部長は昨日そう言ったけど、それはきっと泣いてたあたしを慰めるための嘘だ。


主任とあたしは全然違う。
そんなの、あたしが一番よくわかってる。


振られた腹いせに、二人を掻き回そうとしたあたしと、それを余裕で切り返してきた主任。


それがあたしと彼女の格の違いだ。
仕事も恋愛も、あたしは到底彼女に敵わない。
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