部長とあたしの10日間
とは言え、さすがに二人のラブラブぶりを見せつけられるのは面白くない。


昨日はあんまり眠れなかったし、早く帰って寝よう。
そう視線を逸らしかけたとき、目の端で主任が動くのが見えた。


ゆっくりと手を上げた主任を見て。
どうせ和田さんと待ち合わせでしょ、なんて何の気なしに主任の視線の先を追って息を飲んだ。
だって…。


「ちょっと見て、ユミ!
あれ…」


沙織が興奮気味に指を差す。


主任に駆け寄るスーツに見覚えがあった。
それもそのはず、だってあたしは今日の昼間、あのスーツに抱きしめられたんだから。


その証拠に。
なめらかな生地の感触も、かすかに感じたタバコの香りも、まだしっかり覚えてる。


「何で葛城主任が小泉部長と待ち合わせてるわけ?」


沙織はあたしの腕を引っ張りながら興味津々な様子で聞いてくるけど、そんなのこっちが聞きたいくらいだ。
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