部長とあたしの10日間
あたしは俗に言う、肉食系女子で。
行くところまで行けば相手を夢中にさせる自信がある。


誘いに乗ったのが、お酒のせいだろうと気まぐれだろうと、ホテルに行ってしまえばこっちのもの。


ずっと欲しかった相手がようやく手に入る達成感を感じた次の瞬間、予期せぬ邪魔が入った。


それは葛城主任から和田さんにかかってきた一本の電話だった。


和田さんは二言三言話してすぐに通話を終えたけれど、そのあと様子が一転した。
ついさっきまで、あたしとホテルに行く気になってたはずなのに、


「ごめん。
俺、どうしようもなく都合のいい男みたい」


そんな訳の分からない言葉を残して、突然店を飛び出してしまった。


狙っていた男がようやく手の届く距離まで来たのに、このまま逃がしたとあっては肉食系女子の名が廃る。


慌てて和田さんを追いかけたあたしは、居酒屋から程近い彼のアパートで衝撃の現場を目の当たりにした。


和田さんは、彼の帰りを待っていた葛城主任と仲睦まじく部屋の中へと消えてしまったのだ。
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