部長とあたしの10日間
「…土曜の夜、葛城主任と和田さんが二人きりで会ってるのを見かけたんです」


ミーティングルームの扉を閉めたあたしは慎重に言葉を選ぶ。


事実をオブラートで包んだのは計算。
いきなり二股なんて単語を出したらオジサンにはショックが大きいかもしれないし、徐々に情報を足していった方が信頼性が増すから。


「葛城と和田…?」


小泉部長が眉を潜める。
自分の恋人が他の男と密会してたなんて聞かされたら、そりゃ驚くわよね。


「仕事の関係というより、すごく親しそうでした」


そろそろ分かってきた?
自分があの女に上手く扱われてたって。


「葛城主任、そのまま和田さんの部屋に入って行ったんです。
まるで恋人みたいに…」


ちょっと脚色したけど、だいたいは見たまま。


「部長には伝えない方がいいかとも思ったんですけど、部長と和田さんを、平然と二股かけてる葛城主任を見てたらやっぱり黙ってられなくて…」


「二股…?」


さあ、女に騙されてたことに気付いた40オトコはどう出る?
なんて内心ちょっと楽しんでたあたしに返ってきたのは、予想外の反応だった。
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