部長とあたしの10日間
「それは良かった…、のか?
昨日あんなに泣いてたくせに、若い奴には全く付いていけない」


「───年寄りみたいなこと言わないで下さいよ」


あたしの言葉に部長は苦笑すると、まるで開き直ったように続ける。


「40にもなりゃ完全に年寄りだよ」


あたしが気になってたまらない張本人のくせに、憎まれ口をすんなり受け入れる様子に、逆にあたしがムッとしてしまう。


「そんな風に言わないでください。
部長はまだ全然、現役───」


そこまで言いかけて、部長の驚いた顔に我に返る。
あたし、何で全力でフォローしてるんだろう。


ああ、もう。
部長といると、何でこんなにペースが乱されるの?


そう内心で頭を抱えるあたしを知ってか知らずか、部長はあたしの頭をくしゃっと撫でて微笑んだ。


「…お世辞をどーも」


やばい。
その笑顔がまたあたしの胸を締め付ける。


「じゃあ、お休み」


そのまま踵を返し、去って行く部長の背中を見つめながら、あたしは当分収まりそうもない胸の高鳴りを抱えて立ち尽くす。


ああ、もう。
本当にどうにかして欲しい。
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