部長とあたしの10日間
あたしは素直に驚く。
あんなことがあって気まずいに違いないのに、和田さんがこの状況で助け船を出してくれるとは思わなかった。


「頼むよ、幹事」


顔の前でパンッと手を合わせる和田さんの砕けた様子を見ていて、二人が同期だったことを思い出した。


「…仕方ねぇな」


木崎さんは仕方なさそうに腰を上げる。
ようやく木崎さんから解放されてあたしはホッと息を吐いた。


「ごめん。
アイツしつこかったでしょ…」


和田さんは木崎さんがいなくなったのを確認した後、申し訳なさそうにあたしの隣に腰を下ろす。


「どうしようか困ってたので助かりました」


相変わらず、和田さんは誰かさんと違って女性の気持ちに敏感なようだ。


「…元気?」


「はい。
振られても諦められなくて、こうして企画部の飲み会に乗り込むくらいには」


「え」


和田さんの顔が固まるのがちょっといい気味だったりして。


「冗談ですよ。
あたし、切り替え早い方なんです。
もう吹っ切れましたから」


あたしが冗談抜きでそう言うと、


「早過ぎでしょ」


和田さんはようやく笑顔を見せた。
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