部長とあたしの10日間
びっくりして部屋を見回すと、和田さんはメニューを差し出す気の利く部下の振りをしながら、しっかり部長と葛城主任の間に割り込んでいた。


なるほど、葛城主任と付き合ってるはずの和田さんだって、ああいう二人を見るとやっぱり不安に思うのだ。


小泉部長にこっそり敵対心を燃やしている和田さんがいじらしくて、自分がつい最近振られたことも忘れて応援したくなってしまう。


それにしても。
和田さんが葛城主任に向ける表情は、普段のクールな様子からは考えられないくらい柔らかい。


まるで主任が好きだって顔に書いてあるようなものなのに、どうして今まで気付かなかったんだろう。
彼を落とそうとして費やした時間や労力を思うと、自分の見る目の無さにつくづく呆れてしまう。


まぁ今となってみれば、それが部長の為人を知るきっかけになったのだから、全てが無駄だったわけではないのだけど。
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