部長とあたしの10日間
「───まさかとは思うが…。
そんなくだらないことを言うために俺をここへ連れてきたんじゃないだろうな？」


小泉部長は眉間に皺を寄せて一言。
え？ちょっと待って、それだけ？


「くだらないって…、部長はいいんですか？」


「いいも悪いも、俺が口を出すことじゃない」


呆れたように言い捨てて部長は部屋を出て行こうとする。


何、余裕ぶってるのよ。
ここで部長が二股を黙認しちゃったら、葛城主任から和田さんをいただくという計画が台なしになってしまう。


「甘いから利用されるんですよ…」


思わず声が出て、あたしは慌てて口を塞ぐ。
ヤバッ。
思わず本音が出てしまった。


「どういう意味だ？」


小泉部長があたしを振り返ってこっちを見る。
だからその鋭い目、苦手なんだってば。


「…みんな噂してるじゃないですか。
葛城主任は小泉部長に取り入って出世したって」


この男の目はごまかせそうにないから仕方なく白状すると、


「そんな噂があるのか…」


小泉部長が溜め息混じりに言った。
いやいや、あれだけ周りが騒いでるのに、
オジサンとはいえ情報に疎過ぎるでしょ。
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