部長とあたしの10日間
「へぇ。
あの容姿で中身もストイックなんて、ますますイイ男じゃない」


なんて、部長をさらに買い被ってしまった様子の沙織に溜め息が出る。


「ストイック…ねぇ」


この場合、ストイック過ぎるのもどうかと思うけど。


「ユミが行かないなら、あたしが行っちゃお」


「ちょっと!」


冗談とも本気ともつかない様子の沙織を慌てて引き留めていたとき。
視界の端で部長が静かに腰を上げるのが見えた。


葛城主任は和田さんと向き合ったまま動く気配はない。
少なくとも二人で抜け出すのではないことにホッとする。


「あたしが行くから、沙織は邪魔しないで」


沙織を制して立ち上がったあたしは、スーツの内ポケットを探りながら部屋を後にした部長に続いた。
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