部長とあたしの10日間
好きな相手には見向きもされないくせに、ナンパ男たちの気はしっかり引いてしまうなんて。
あたしが今まで一生懸命磨いてきた外見は、なんて無意味だったんだろう。
悔しくて唇を噛んだとき、


「櫻井!」


突然あたしを呼ぶ声が聞こえた。


この声って…。
半信半疑で振り返ると、部長が駆け寄ってくるのが見える。


嘘。何で部長がここに?


「荷物」


部長はあたしのコートとバッグを持ち上げて見せる。
もしかして、それを渡すために追いかけて来てくれたの?


部長はあたしたちの前で足を止めると。
あたしの手を掴んだままの男たちに訝しげな視線を送る。


「知り合い…、じゃないよな?」


「違いますよ!」


こんな強引に誘うところを見て、なんでそんなすっとぼけた可能性を思い付くのよ。
あたしは大きく首を縦に振る。
< 97 / 146 >

この作品をシェア

pagetop