水も滴るいい隣人【TABOO】
水も滴るいい隣人

「最悪……ケイタイまで水没した」


 安全地帯に逃げてきた。着の身着のままで、ケイタイと財布をひっつかんで、哀れな姿。

「大丈夫ですか? タオル使ってください」


 隣人さんがイケメンだということは、事前リサーチでしっかりと情報は掴んでいたけど。こうして面と向かって会話するのは、はじめて。

「ありがとうございます」 

「どういたしまして」

 水も滴るいい隣人……

 張り付いたテイシャツから、逞しく美しい上半身。ある意味、脱いでるより色っぽく。

 艶々の黒髪が張り付いた、端正な顔は、こんな惨事の中怒りもせずに微笑んでいる。


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