水も滴るいい隣人【TABOO】
「いやぁ! すみません! 最上階の二軒だけが水没して、他の部屋は雨漏り程度の被害で済んだようです」
禿おやじの管理人の胸ぐらを掴む。
「済んだようですじゃないでしょ! あたしの部屋はどうなるのよっ!」
隣人さんが、ぷっ、と吹き出した。
「あら、やだ。ごめんなさい、私ってば……で、管理人さんどうするおつもりでしょうか?」
禿おやじは、ハンカチで頭の汗を拭き取ると「もちろん、全額賠償します」と言ってくれた。
絶対でしょうね? 全額よね? とギロリと睨みつけると、「ひぃ」と震えながら隣人さんに助け船を求める。
「それで、今夜僕たちはどうすればいいですか?」
「あ、この部屋は空き部屋なので、あとはお若いお二人でどうぞご自由に」
「お、お見合いじゃないんだから何よそれ! あ、待て! 管理人!」
管理人は、すみません、を連打しながら部屋から消えた。