忘れ去られたキオク
~哀れと哀しみ~ エルネストside
椎奈が帰って、静かになった教会の中で、俺は考えていた。
──どうしたら、椎奈を悲しませることなく、真実を教えることができるか。
そんなことしか考えられない俺に、嫌気が刺す。
そして、考えるだけで行動することができない俺にはもっと嫌気が刺す。
あの日、椎奈に初めて会った日に言ってやればよかった、と後悔した。
でも、今後悔しても、もう遅い。
人生ってのは、そういうものだ。