忘れ去られたキオク
あたしがコクコクと頷いている間、隣でエルネストはしかめっ面をしていた。
話を持ち掛けても、曖昧な返事しかくれない内に、噴水広場を越えて、自分の家に着いた。
「ありがとね!! エルネスト」
「...ああ」
ほらまた、曖昧な返事。
こういうときは、大体考え事をしてるんだよなー、っていうのも9年間の親友だから分かることかな。
「じゃーねーっ」
「ああ」
なるべく、気にしないフリをした方がエルネストにとっても都合がいいだろうと思って明るく声をかけてドアを開けた。
エルネストは未だにしかめっ面をしていた。