忘れ去られたキオク
椎奈はいつもの特等席である、右側のピアノの前に座ると、エルネストに話しを続けた。
「翔平(しょうへい)にプロポーズされちゃったー!!」
「ふん」
「ふんって何よ!!
実は羨ましいんでしょ?」
こんな会話は日常茶飯事のことだった。
一通り、椎奈のノロケ話を聞いたエルネストは、2度目のため息をつく。
──今日もダメだったか。
そう心の中で呟いて、銀色の髪の毛を垂らしてうなだれた。
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