忘れ去られたキオク




椎奈はいつもの特等席である、右側のピアノの前に座ると、エルネストに話しを続けた。



「翔平(しょうへい)にプロポーズされちゃったー!!」



「ふん」



「ふんって何よ!!
実は羨ましいんでしょ?」



こんな会話は日常茶飯事のことだった。



一通り、椎奈のノロケ話を聞いたエルネストは、2度目のため息をつく。




──今日もダメだったか。



そう心の中で呟いて、銀色の髪の毛を垂らしてうなだれた。





< 3 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop