忘れ去られたキオク
俺は、そんな椎菜の頭を抱き締めることはせず、撫でてやった。
椎菜は一瞬ビクッとしたものの、撫でられることは嫌じゃないみたいだった。
ビクッとされたことは悲しいけど。
まぁ、今はこれでいい。
自分自身を納得させていたのも束の間だった。
瞼の裏に焼き付いた椎菜の過去がよみがえる。
「...シーナ。
あんなヤツのどこが好きなんだ?」
気付いたら、俺はそう口走っていた。
アイツへの嫌悪感を丸出しにして。