忘れ去られたキオク



涙を抑えることも、声を抑えることも忘れて、顔をあげた。



「...朝から、近所迷惑」



ため息と同時に降りかかった声。



今、1番会いたくなかった人がそこにいた。



銀髪の髪の毛の隙間から覗く目は、昨日と違って、優しい目をしていた。



そして「ほら」と言いながら差しのべられた右手。



あたしは、その手を無視して自力で立ち上がり、エルネストの横を駆け抜ける。




「お...おい!? シーナ!?」




エルネストの声を背に、涙を吹き飛ばすように走った。




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