忘れ去られたキオク
──踵を返した俺は、もやもやとした感じたことのない気持ちを抱えながら教会に戻った。
──
「あら、おはよう。エルネスト」
「...おはようございます。アイリス様」
教会のドアを開けると、いつぞやの日のように、アイリスが立っていた。
俺はカーペットを歩いてアイリスの隣を過ぎると、2つのピアノの中央に立った。
アイリスは「じゃあ、私も...」と言いながら定位置を探す。
そして偶然か、それとも意図的にか、椎菜の定位置である右側のピアノに座った。