忘れ去られたキオク
そう言ったきり、沈黙になる。
...多分今の話は、本題までの導入でしかない。
手紙でいうと、『暖かい風が吹きはじめ、桜のつぼみも膨らみはじめました。皆様、いかがお過ごしでしょうか』みたいな部分だろう。
今か今かと、本題に入るのを静かに待っていると、綺麗なピアノの音色が響いた。
「...」
...ショパンの『別れの曲』だ。
入りはゆったりなのに、途中から激しくなるリズム。
なぜかすごく切なくて、でも俺の大好きな曲。