忘れ去られたキオク
そして、アイリスが『別れの曲』を弾き終えると、口を開いた。
「...過去には行ってみたのかしら?」
俺の頭の中では、『別れの曲』が繰り返し流れ続けている。
今の話の入り方も、まさに『別れの曲』のようだった。
ゆったりとした流れで始まった会話の、リズムを変える1つの言葉。
「...はい」
「私も行ってみたのだけど、彼女、本当に可哀想だと思うわ」
「...」
「まさか好きな人に、こ...「──アイリス様!!」
アイリスが言おうとした言葉を、いつのまにか遮っていた。
その先の言葉は、聞きたくなかった。