アンチヒーロー
序章
都立道三高校――ドウザン高校。
略して、ザン高。
工業科と普通科があり、去年から共学となったこの学校は8割が男子生徒でその実態も誉められたものではない。
月に1~2回、窓が割れることは当たり前で、授業をまともに受けている生徒はクラスに数人しかいない。
授業中にいくら騒ごうが煙草を吸おうが先生は見て見ぬふり。
グラウンドでバイクを走らせエンジンの爆音が地域に鳴り響くせいで苦情も後が絶えない。
校内で繰り広げられる権力争いはいつしかグループ化していき、いくつかのグループ同士で騒動を起こすものだから、警察や病院のお世話になる者は過半数以上。
荒れに荒れたザン高。
しかし、そんなザン高を揺るがす一人の男がいた。
憧れや恐れを抱き、付き従う者。
反感や憎悪を抱き、歯向かう者。
ザン高全体が彼に注目していた。
血も涙もないその強さに、誰もが圧倒される。
絶対王者。
――――クドウ ユウタ。
それが、彼の名前だ。