オオカミとお姫様
「玲央?」

「なっなんでもねぇよ」

覗き込む詩音から体ごと逸らす。
そんな風に見られたら、余計に詩音を意識してしまう。
ずっと俺の事を考えてただなんて…
俺だって、ずっと詩音の事考えてきたし!

「頭痛いですか?熱中症とかですか?保健室行きますか?」

俺が顔を隠しているのは体調不良だと思っているのか、すごく心配してくる。
全然違ぇよ。
全部詩音のせいだ。



…っ!!?


何かが俺の手に触れた。
指の隙間から覗くとそれが詩音の手だと判明した。

「大丈夫ですか?」

「ずりぃよ…」

「私、そんなにズルいですか?」

こんなに俺をドキドキさせるなんて。
嫉妬させるなんて。
ズルすぎるだろうが。

「あんなこと、さらっと言うなよ」

「『あんなこと』?」

詩音はよくわかっていないようだった。

「わかんねぇならいい」

「そっそうですか…」

しゅんとした詩音。
そうやって色んな表情を俺に見せてきやがって…
全部かわいいんだよっ!
いい加減気付いてくれ…

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