オオカミとお姫様
「玲央?」

俺を呼ぶ声。
…きっと今詩音はすげー困った顔してるんだろうな。
無理矢理こうしていれば時間が過ぎてチャイムが鳴る。
気を遣って一緒にいてくれる…けど、それじゃダメだよな。

「しょうがねぇな」

ホントは嫌だけど、詩音のために授業に出てやる。
そのかわり…

詩音が俺を見て立ち上がった。
立ちきったと同時にキスをした。

目の前には思考停止した詩音の姿が。
赤面している。

「充電できたし、授業出てやるよ」

「…っ」

硬直して動かない詩音。
これはもう1回していいってことか?

「まだしてほしいの?お望みなら致しますよ?お姫様」

からかうように近づく俺。

「…ちっ違います!!ドキドキさせすぎないでくださいっ。心臓が持ちません!」

そんなにドキドキしてくれてたんだ。
それはそれで嬉しい。

「心臓止まったら、人工呼吸だな」

「れっ玲央!」

頬を赤らめた詩音が困ったように言った。

「ごめんごめん。じゃあ行くか」

俺は詩音に向けて手を差し伸べた。
俺に伸びてきた手を受け取り、優しく繋がった。
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