アンラッキーなあたし
顔見知りの社員が近くを通るたびに俯いたり、ベールで顔を隠したり、物陰に隠れたり、あたしの挙動不審に磨きがかかる。

けれど、そんな心配はご無用だった。メイクをし、ドレスアップしたあたしが、あの桜庭さくらだと気づくものはいなかったのだ。

気づかれたら気づかれたで逃走するくせに、こうも素通りされたら、それはそれで虚しい。

あたしは案外、あまのじゃくな性格なのだ。

パネル展は暇を極めていた。社員達は退屈そうに突っ立ち、あくびをかみ殺している。意一方、無料占いコーナーは大盛況である。

勝った、ざまあみろ。

あたしは勝負にならない勝負をし、勝利を確信していた。
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