アンラッキーなあたし
「まぁまぁ。どんなに辛い事があっても死んだらお終いだよ。な、何もないなんて言うな。お前には占いの才能がある。それに命あるうちは何でも出来る。そだろう?」

千葉が必死にあたしを慰めてくれた。

なんだ、こいつ、もしかして案外いいやつなんじゃない?こんな、何の取り得もない、なんもない、ブスなあたしをさ…。

ん?なんも、ない?

「あ!」

あたしが勢いよく顔を上げると、千葉は「うお!今度はなんだ?」と身構えた。

「あたし、何にもなくなんかなかった」

にやりと笑ったあたしに、千葉は安心したように頷いた。

「そうだぞ。桜庭。人間、一つくらいはいいところがあるもんだ」

「じゃーなーくーてー!捨てるに捨てられなかったあるものを持ってるの!」

「捨てるに、捨てられなかったもの?」

千葉が首をひねっている。あたしは、残りのビールをぐいっとあおり、すくっと立ち上がって、テーブルに片足を載せ、空のジョッキを高らかと持ち上げた。
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