アンラッキーなあたし
「ああ!」

あたしが叫ぶと、

「思い出したのか!」

千葉がこちらを振り向いた。

「思い出した」

あの、雑誌の名前。

「まじか?それで?」

思い出した。すっきりした。まるで魚の小骨が歯茎にはさまったような気分だった。当時親の目を盗んではこっそり買っていたエロティーンズ雑誌。処女のあたしの性のに関する知識はすべてあそこから得たものと言っても過言ではない。バイブルと言ってもいい。それなのに忘れていたなんて、不覚だわ。

「なぁ、桜庭!遠い目してないで早く教えろよ!」

千葉が頭をかきむしった。

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