アンラッキーなあたし
「悪かった。許してくれ。28年ものの純潔を奪った俺を、煮るなり焼くなり好きにしてくれ」

28年ものの純潔を、奪った?

ようやく土下座の意味を理解したあたしは、頭に巨大タライを落とされたような衝撃を感じた。

「ひどい、ひどいですよ、千葉さん」

あたしはおいおい泣いた。

「返せ!あたしの処女返せ!」

泣き叫ぶあたしを目の前にして、千葉も今にも泣き出しそうだった。

「俺だってできることなら返したいよ。28年ものの処女なんて重過ぎるわ。しかも記憶もないし」

千葉の力ない反論に、「あーん!これじゃ修道女になれないよ。処女検査で落ちるよぉ」とあたしは大号泣。

「問題はそこじゃないだろう」

千葉がすかさず突っ込んだが、あたしは案外本気だった。

「住むところなくなったら、修道院へ行こうと思ってたのに…。神様と結婚しようと思ってたのにぃ」

「桜庭、それは神への冒涜というものだ。そんな理由じゃ、即刻神様に離婚されるぞ」

千葉は呆れていた。
< 163 / 354 >

この作品をシェア

pagetop