アンラッキーなあたし
「どうだ、これで?」

聞かれてあたしは考えた。

確かに、悪い条件じゃない。むしろいい。このままだったらあたしは本当に行き場を失っていた。それに、家賃や光熱費がかからないならお金だってためられる。でも…。

「いいんですか?」

あたしたち、付き合ってるわけでもないし、むしろ、友達といっていいのかすら危うい関係なのに。

「しょうがねぇだろ」

千葉は、ものすごくめんどくさそうな顔をした。

「その代わり、飯くらい作れよ」

その一言で気持ちが軽くななり、決心がついた。

「は、はい!掃除、洗濯、家事、オヤジ、一切合切引き受けます!」

あたしは千葉の申し出をありがたく受け入れることにしたのだ。

「オヤジはよけいだっつーの」

捨てる処女あれば、拾う神ありである。この場合、神は千葉だ。あたしは、やられた(本当はやられていない)ことも忘れ、心の中で千葉に手を合わせた。

合掌。

「ところで、桜庭」

「な、なんですか!」

千葉は立ち上がると、先ほどあたしが飛び降りようとした窓を開け、手招きした。

「ここ、1階だから。飛び降りても死なないよ。赤っ恥かくだけだから」

窓の外にはアパートの駐車場が広がっていた
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