アンラッキーなあたし
「それにしても、誰かの作った飯なんて久しぶりだよ」

それは、あたしも同じだった。もりもり食べる千葉を見ているのは嬉しいし気持ちがいい。誰かのためにつくり、褒めてもらうことで、こんなにも食事が楽しくなるなんて知らなかった。

「モトカノさんもお料理上手だったんですか?」

話しの流れてこんなことを聞くと、千葉は、食べるのをやめ、

「あいつは、料理なんてできなかったな」

と答えた。

「へぇ。例えまずくても好きな人が作った物って美味しいんでしょうね」

フォローを入れると、

「いや、料理じたいしなかった。ネイルが崩れるからって。俺はあいつが包丁を握っているのを見たことがない」

と、千葉は言う。

あたしの思い描いていた千葉のモトカノ像が崩れていく。

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