アンラッキーなあたし
「あの…」

あたしは控えめに千葉を呼んだ。返事はない。

「千葉さん?」

少したってから、「なんだよ」という千葉の不機嫌な声が返ってきた。明らかに眠っていたのを起された様子だった。

「あたし、なんか眠れなくて」

体は疲れているのに脳だけが覚醒していた。

「俺は寝てたよ」

向こうで千葉がもぞもぞと寝返りを打つ音がする。ソファーで体を小さくして眠る千葉の姿を思い出した。

「あたし、あつかましいですよね」

「ああ、あつかましいね」

気にするなよという言葉を期待していたのに、はっきりとそう言われては身もふたもないではないか。きっと、あたしが美人だったら、「いつまでいてもいいんだぞ」なんて言われたに違いないのに。

人はこうしてやさぐれ、不良になっていくのだ。
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