アンラッキーなあたし
「そおですかぁ」

どこでどう納得したのかは知らないが、恵梨菜は大人しく自分の席に戻ってパソコンを叩き始めた。それも、人差し指で、だ。俗に言う「北斗打ち」というやつである。

本当になぜこの子が採用されたのかまったく分からないし、同じ給料だというのも腹ただしいのだが、まず、あたしのするべきことは千葉のためにお茶をいれることだった。

それにしても…。

あたしは隣で北斗のケンよろしく人差し指でキーボードを弾く恵梨菜の真っ白な手に視線を向けた。その手はしっとりと柔らかそうで爪にはピンク色のマニキュアが塗られている。

それに比べて、あたしの手はざらざらで、ささくれまでたっている。しかも、見事に四角い男爪。

はぁ、水仕事の似合う手か。

あたしはいそいそと給湯室へ消えていった。
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