アンラッキーなあたし
「俺、占いのお店なんて初めてきたよ。すげえ威圧感だ」

千葉がそっと耳打ちをする。威圧的なのは館ではなくルコ先生の存在そのものなのだが。

「さあ、どうぞ」

ルコ先生がトレイにレモンティーを載せて運んで来た。それを飲みながら、ルコ先生は千葉に、あたしと知り合ったきっかけや、どこに惚れたのかなど、定番の質問をする。あらかじめ予想していたことなので、あたしたちはきちんと話しのつじつまが合う様に答えを用意していた。千葉は得意の営業スマイルでルコ先生の質問にもすらすらと答えている。なんだかズムーズ過ぎて拍子抜けだ。

「あら、もうこんな時間」

ルコ先生が腕時計をかざした。

「ごめんなさい。もう少しゆっくりお話していたかったんだけど、ちょっとこのあとは用事があるんだよ」

大事な用事とは瑞樹とのデートである。

「本当は食事にでも招待したかったんだけれどそれはまた今度と言う事で」

食事なんでとんでもない。絶対にぼろが出る。

「いえ、いいんです。また遊びに来ますから」

千葉がやんわりと断ると、舞台はようやくクライマックスに近づいた。あたしは、ほうと安堵のため息をついた。

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