アンラッキーなあたし
それにしても、こんなにうまくいくなんて。

心配していた千葉の演技もなかなかだ。爽やかな好青年ぶりがルコ先生のハートを鷲づかみにしている。あと十歳若ければジュノンボーイで俳優デビューも夢じゃないかもしれない。

「では、僕らもおいとましようか。行こう、さくら」

「そうだね」

あたしたちは立ち上がると、照れくさそうに顔を見合わせ手を繋いだ。もちろん、これも何度も練習した演技だ。

「あとはどうぞ若いお二人で。さくら、本当によかったよぉ」

ルコ先生は本当に嬉しそうに笑うと、そっと目尻を拭った。もしかして、泣いているのだろうか?あたしに恋人ができた事をこんなにも喜んでくれるなんて。

だんだんあたしは、ルコ先生を騙していることが苦しくなってきた。ルコ先生、ごめんなさい。けれど、ここで全てを明かしたらこれまでの計画が水の泡だ。心苦しいけれど、仕方ない。

「さくら、行こう」

「うん」

もう、二度とルコ先生を騙したりしません。だから、許してください。

胸の中で呟くと、あたしはルコ先生に背を向け、ドアに向って歩き出した。

やっと、終わった。
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