アンラッキーなあたし
「カーット!」

ドアノブに手をかけた途端、ルコ先生が叫んだ。

か、かっと?

恐る恐る振り向くと、すっかり意地悪婆さんの顔に戻ったルコ先生が手招きしていた。

「おい、大根役者二人。こっち、座れ」

あたしと千葉は顔を見合わせる。

「なかなか、面白い寸劇だったぞ」

ルコ先生が、にたーっと笑った。やはり、そう簡単にはいかなかった。

「やだな、先生。急にどうしたんですか」

まだどうにか取り繕うと千葉がとぼけたふりをする。

「けっ。千葉さんとやら、もうその白々しい演技をやめなはれ。どうせ、あんたら付き合ってなんかないんだろ?」

ルコ先生はすっかり素に戻りタバコをくゆらせた。

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