アンラッキーなあたし
千葉さんて、かっこよくて、やさしぃですよねぇ。

恵梨菜の甘ったるい声が頭の中で反復する。

そうか?あたしには全然優しくないけど。

でもそれは、千葉に限ったことじゃない。あたしは男の人に優しくされた経験なんかない。

そう思いかけて、はっとした。

ううん、違う。一人だけ、優しくしてくれる人がいた。

そろそろ来る頃かもしれない。

あたしは急にそわそわし始めた。給湯室の曇った鏡に自分の顔を写してみる。相変わらず辛気臭い顔だ。乱れた髪の毛を手ぐしで直し、荒れた唇をべろりと舐めて応急処置をほどこすと、ちょうどコーヒーがわいた。
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