アンラッキーなあたし
「すまん、そういうつもりじゃ…」

「いいんですよ」

ようやく吐き気のおさまったあたしは、ゆっくりと顔をあげた。

「いいんです」

だって、千葉が来てくれたから。あたしのために、走ってくれたから。あたし、また助けてもらったから、だから…。

「桜庭…。泣くなよ」

泣くな?

自分では笑っているつもりだったのに、なぜか涙が頬を伝っていた。

「本当に、ごめん!恐かっただろ?ごめん、ごめん」

次ぎの瞬間、あたしは、千葉に抱きすくめられていた。

「や、やだ。どうしたんですか?これは、汗。汗ですってば」

「ごめんな。本当にごめん」

汗だって言っているのに。無理を言って紹介を頼んだのはあたしなのに。千葉は、こちらが申し訳なるくらいごめんごめんと繰り返した。でも、息が止まるほど強く抱きすくめられたら、さっきまで感じていた恐怖なんて、すっかりどこかへ飛んで行ってしまった。

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