アンラッキーなあたし
すると、そこへ髪の毛を盛り上げ、光沢の強いドレスを纏ったおばちゃんがニコニコ顔でステージへ現われた。

「みなさーん。こんにちは。今日はわたくしどもの主催するラブラブカップリングパーティーへご参加いただき、ありがとうございます。わたくし、本日の司会進行役を努めさせて頂きます、藤田恵里子と申します」

カップル見届けうん十年といったベテラン司会者のおばちゃんは、どの参加者よりも派手であった。そんなおばちゃんの間違った気合の入れようにどん引きしつつも、緊張で胃がきりきりと痛んだ。

さっさと相手を見つけて帰りたい。

しかし、おばちゃんの挨拶の後は、このお見合いパーティーの主旨や進め方、それから、主催者の挨拶、さらにはこのパーティーで見事結婚まで至った市会議員の挨拶と続き、あたしはすっかり眠気に襲われてしまった。

頑張れ、自分!負けるな、あたし!と気合をかけるのだが、どうしても眠い。おっさんの話というものはなぜこんなにも長いのか。まぶたが重くのしかかる。

いかん、あかん。寝れば死ぬぞと気合をかけてみても、ここは過酷な雪山ではなく、ゆったりとしたホテルの宴会場なのだ。

ああ、このままでは落ちる、おち、る…。

そして、世界は暗黒の闇に包まれたのだった。
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