アンラッキーなあたし
「うわっ!」

「ぎゃ!」

うつむいて、でくの棒のように突っ立っていたら、走ってきた千葉とぶつかって、持っていたお盆をひっくり返してしまった。

「さ、桜庭、お前!何こんなところで恨めしそうに立ってんだよ!」

あたしゃ、ユーレイか。

「す、すみません」

慌ててポケットからハンカチを取り出すと千葉のスーツを拭った。ジャケットには熱々のコーヒーがたっぷりしみ込んで、シャツにも茶色いシミがぽつぽつと浮かんでいる。

「あっちぃな、くそ。これから会議だっつうのに」

「本当に、本当に…」

「ああ、もういいよ!」

千葉はあたしのハンカチを奪い取ってどこかへ行ってしまった。

残されたあたしは床にはいつくばって割れたカップの破片を拾い、雑巾をかける。

ああ、中田さんの前でなんたる失態…。

他の社員の目は南極の氷のように冷たい。
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