アンラッキーなあたし
だが、あたしとは対照的に、カピバラさんはすでに諦めモードにはいっていた。

「さくらさん、今日はお話してくれてありがとう。僕、女の人とこんなに話したの初めてです。それだけで満足です。いい思い出ができました」

パカピバラさんが笑った。

その笑顔にずきんと胸が痛んだ。ありがとうなんて言わないでよ。あたし、あんたのこと軽蔑してたんだよ。なのに、ありがとうなんて…。

立ち上がろうとするカピバラさんに、あたしは「待って」と呼び止めた。

「待って、カビ…、いえ、松本さん」

「ん?」

「最後に、もう一つ思い出作りましょう?」

あーあ、あたし、何をしようとしてるんだろう?自分の甘さが嫌になる。けど、あたしは、やっぱりカピバラさんを放ってはおけない。だって、きっと、カピバラさんはあたし。あたしはカピバラさん。だから、だから、こんな提案をしてみた。

「あたしたち、カップルになりましょう?」

カピバラさんが小さな目を見開いた。

「そ、それって」

あたしは頷いた。告白タイムで、あたしは、差し出されたカピバラさんの手を握る約束をした。

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