アンラッキーなあたし
「ごめん…。勝手なのは十分承知だよ…。でもね、ヤヨの今の彼、ヤヨの事殴るの。もうヤヨ、一緒にいたくない…」

弥生はさめざめと泣いた。

「見て、これ。」

弥生が腕まくりすると、痛々しい青あざがいくつも浮かんでいた。

確かに、これは酷い…。

「ヤヨ帰りたくないよ…。お願いだからここに置いてよー」

弥生はその場にしゃがみこんでわんわん泣いた。よほど辛い思いをしてきたに違いない。

「弥生…。」

そんな弥生を、千葉は優しく抱きしめた。その瞬間、ぎゅっと胸の奥が痛んだ。

「なぁ、桜庭…」

千葉がようやくあたしを見る。

「そういう事情だし、こいつ、しばらくここにいていいかな?」

えっ…。

正直、嫌だって思った。ムカつく事もあるけど、それなりに楽しかった千葉との同居生活。そこに他の誰か、しかも、モトカノが入ってくるなんて…。

けれど、ここはあたしの家じゃない。千葉の家だ。それに弥生は千葉の元カノ。ずっと千葉が思い続けてきた女の子。居候のあたしはがとやかく言えた立場じゃない。

「当たり前じゃん?ここは元々、千葉と弥生ちゃんの家でしょう?」

するとまた、胸がずきんとした。

「ありがとう、桜庭」

なぜだろう?千葉の胸の中で泣いてる弥生が憎らしくてたまらないのは…。
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