アンラッキーなあたし
「桜庭さんが無事でよかったです。女の子なのに火傷のあとが残ると大変だ」

中田さんは言うと、キャンディーをくれた。今日は緑色。多分マスカット味だ。中田さんはこうしてくるたびにあたしにキャンディーをくれる。あたしは貰ったキャンディーを舐めず、瓶に入れてコレクションしている。宝石みたいに煌くキャンディーはあたしの宝物だ。

キャンディーをくれたあと、「ところで」と中田さんが言った。

「ところで、よかったら桜庭さんも定期預金とかしてみない?」

「定期、ですか?」

「うん。毎月少しづつでもいいからさ。貯めようと思っても自分じゃなかなか貯められないでしょう?」

少し垂れ気味の目をされに垂らしで中田さんが笑う。あたしはまた壊れたブリキ人形になる。

「どう?」

そう聞かれて、「結構です」なんて言えるはずもなく、ついあたしは、

「考えておきます。ついでに、今までも貯金も全部中田さんの銀行に預けようかな?ほら、中田さんの会社なら安心だし」

などと都合のいいことを言ってしまった。

「本当ですか?ありがとうございます。いつでも相談にのりますよ。ではまた」

中田さんはキシリトールのような爽やかさを撒き散らし帰っていった。
< 27 / 354 >

この作品をシェア

pagetop