アンラッキーなあたし
「返してよー!」

携帯を奪い返そうとしたけど、なんてったって、弥生は足も手も長い。猫じゃらしで遊ばれる猫のように、あたしは、弥生にまとわりついた。

「どうして返事が遅いの?仕事と僕どっちが大事なの?だってぇ。信じらんない!」

弥生が大声でシンディーからのメールを読み上げていく。

やだ、千葉の前で。

「返してください!」

「ひーくー!さくらさんも素直に謝ってるし。うわ、このメールなんてひどい!僕の事だけ考えて欲しい…」

「返してってば!」

「キャー!」

ついに、あたしは弥生に体当たりしてしまった。柳のようにしなやかな弥生の体は軽く、そのまま床に倒れた。

「あっ、ご、ごめん…」

さすがにまずいと手を差し伸べると、弥生は、あたしを睨みつけて言った。

「マジキモイんだよ!そうやって互いの顔も知らないくせに恋愛するなんて!虫酸が走る!」

「弥生、言い過ぎだろ!桜庭だって好きで出会い系なんかやってるわけじゃないんだよ!どうしようもない事情があるんだって!」

千葉があたしのことを一生懸命フォローしてくれた。けれど、なんだか余計悲しかった。惨めで、余計いたたまれない。
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