アンラッキーなあたし
その不運な人生は、産声をあげた瞬間から始まっていた。

実は、あたしの誕生日は父の命日でもある。

あたしが生まれた日、父は病院へ向う途中事故で死んだ。だからあたしの誕生日は父の死んだ日。

父が病院へ運ばれる救急車の中で息を引き取ったとは露知らず、母は、大開脚に白目をむながら、手をパーに開いた(かどうかは知らないが)赤ん坊を産み落とそうと必死に分娩台の上で戦っていた。

ちなみにあたしは、なんとも強情な娘で、あと一息というところでなかなか出てこず、母を苦しませたらしい。

生まれる前からの親不孝者である。

それでも、散々苦しみぬいてようやく会えた我が子とのご対面は感動的なものだ。目に涙を浮かべ、優しく微笑み、「こんにちはアカチャン」とか「はじめまして天使ちゃん」とか、そんな言葉を母もきっと用意していたに違いない。

だが、母は、赤ん坊を一目見るなり思わず顔をしかめた。

赤ん坊の顔に大きな痣があったからだ。その痣は顔の右半分をほとんど覆いつくすほど大きく、日本列島みたいな細長い形をしていた。
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