アンラッキーなあたし
「うっ…」

その時、突然弥生が声を詰まらせ、めそめそと泣き出した。

「弥生ちゃん?」

「さくらさん、ごめんね」

「どうしたの急に?あ、もしかして、暴力男に意地悪された?それとも、おなかが痛い?」

おろおろするあたしに、弥生は大粒の涙をこぼした。

「この前は、ごめんなさい」

「この前?」

「ほら、殴られた日のこと」

ああ、そのことね。

「いいんですよ。あたしが悪かったんです」

弥生が首を振る。

「あんな意地悪するつもりじゃなかったの。色々あって、いらいらしてて。つい、さくらさんに八つ当たりして。本当に、本当にごめんなさい」

弥生はこどもみたいにしゃくりあげた。そんな弥生の背中をあたしは優しく撫でた。

やっぱり、綺麗な子は心も綺麗だ。人を許すことも、許される術も、きちんと心得ている。それに比べてあたしは、弥生をひがんでばかりだった。軽蔑してばかりだった。
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