アンラッキーなあたし
なんだかんだ言って、楽しい同居生活だったな。

狭いキッチンで立ち止まり、あたしはこれまでの同居生活を振り返った。

ここであたしはほぼ毎日千葉のために食事を作った。千葉は、あたしの料理をいつも綺麗に平らげてくれた。

お前と暮らしてよかったわ!そう言った千葉の声が甦る。

千葉と暮らして、あたしは初めて他人の優しさに触れた。そして、初めて、こんな人の彼女になれならな…。って、本気で願った。

願いは届かなかったけれど。

もう千葉とあたしを繋ぐ物は何もない。けんかしたり、笑い合ったりすることもないけど、すれ違った時は、「おう、桜庭!」って笑って声をかけて欲しい。そんな偶然を楽しみに、あたしはこれから強く生きていく。

玄関のドアがぱたりと閉まる音が、この恋の終わりの合図に聞こえた。あたしはスーツケースをがらがらと引きずりながら、涙をこらえて歩き出した。
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