アンラッキーなあたし
「あの、すみません」

「はい?」

とうとうあたしは、長屋風住宅の前でゴミをまとめていたおばちゃんに声をかけた。

「あの、ここにあったアパートは?」

「ああ、昨日やっと取り壊し作業が終わったよ」

「は?」

「これで静かになったよ。作業中はうるさくて、うるさくて…」

「オバサン、嘘でしょ?あたし、今日ここに引っ越してくる予定だったんですよ?」

あたしは目を白黒させながらオバサンの肩を揺さぶった。

「や、やめとくれよ!このキチガイ女!何言ってるんだい?そんなわけないだろ?もう何年も空き家で、入居者なんていなかったんだから。だいたい、あんた部屋見に来たのかい?とても人が住めるような建物じゃなかったよ!!」

なぬ…。

「あっ、こらあんた!荷物ーー!」

あたしは荷物置き去りにすると、紹介してくれた不動産屋へ走っていた。はっきり言って、千葉のために走った時よりも本気だった。
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