アンラッキーなあたし
「う…そ…」

しかし、不動産屋が入っていた店舗はもぬけの殻だった。呆然と立ちすくむあたしの前に、一人の老人が現われ、

「ここ夜逃げしちまったんだよ」

と、不敵な笑いを浮かべ、去って行った。

一刻も早く引っ越さなくてはと焦っていたあたしは、部屋も見に行かす、間取りを確認しただけで契約した。

あたし、また、騙されたんだ…。

力が抜けて、へなへなと座り込む。

引っ越し資金に、全財産をつぎ込んでしまった。新居はおろか、明日食う物すら買えない状況だ。給料を日払いにしてもらったとしても、帰る場所がない。

あたしは頭を抱え、髪の毛をかきむしった。

そうだ!ルコ先生に電話してみよう!

そう考え、はっとする。

電話、壊れてたんだ。しかも、ルコ先生の家は知らないし、店は閉まってるし…。ひぃ~!!

あたしは本当にいえなき子になってしまった。

だれか、助けて…。

しかし、いつもピンチを救ってくれた千葉は入院中で、ヒーローは現れてはくれなかった。

その晩、あたしは、近くの公園のトンネルの中で過ごした。
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